「アウトドアで防災を考える」今回は「災害時の食」を取り上げる。命をつなぐために「食」は欠かせないが、災害時は普段と同じように調理することが難しい場合がある。そんな時に役立つものの一つがいわゆる「非常食」だが、食の好みはそれぞれ違う。備える前に味を確かめ「自分に合うもの」を選ぶようにしよう。
自然災害が起きるとライフラインが止まったり、物流が途絶えたりする可能性がある。どんな時でも命をつなぐためには「食」は欠かせない。食料は最低で3日分、できれば1週間分の備蓄が呼びかけられている。
災害時への備えとしてどんなものをそろえておけばいいのか。日本赤十字秋田短期大学の及川真一さんに聞いた。
「非常食」を一つの食として考えている人が多いと思うが、非常食は大きく分けると3種類に分けられるという。それが「行動食」「避難食」「備蓄食」だ。
「行動食」は、場所を選ばずに手軽に栄養が取れるもの。かばんに入れて持ち歩けるものや衝撃・熱に強いものが良いとされている。
「避難食」は、避難所や車の中などインフラが使えない環境で食べることを想定し、常温で長期保存ができるもの。食器が必要ないものが理想とされている。
「備蓄食」は、長期にわたるインフラの停止や短期的な食糧危機への備えだ。カップラーメンやパスタなど調理がほとんど必要なく、「ローリングストック」できるものが良いとされている。
では、非常食を選ぶ際のポイントは何だろうか。
及川さんは「災害時はすごいストレスがかかる上に、非常食を食べたときに自分に合わないと、それもストレスになる」として、「まずは自分がいつも食べているもの、好きなものを用意すること」とアドバイスする。
その他には、ごみの問題を考えて「捨てるのに困らないもの」。そして「調理がいらないもの」。災害時なので電気・ガスが使えない状況でも食べられる、そういうものを選ぶことがポイントだという。
市販のいわゆる「非常食」は、先に紹介した3種類のうちの「避難食」にあたる。長期保存できる「アルファ化米」を使ったドライカレーを、佐藤愛純アナウンサーが食べてみた。
アルファ化米はコメの結晶のようになっていて、一度炊いたご飯の水分を乾燥させて、水で戻すというイメージ。水と付属のカレー粉を袋の中に入れてかき混ぜ、水なら1時間、お湯なら15分で完成だ。袋を開けるとカレー粉がふわっと香って、それほど辛くないので幅広い年代の人が食べられそうだ。
続いて佐藤アナウンサーが試食したのはラーメン。必要なのはお湯だけで、お湯を入れて4分で完成。しょうゆベースの味がしっかりしていた。
最後はデザート。乾燥した餅を水に漬けると次第に柔らかくなった。全体的に水を吸ってから、さらに1分くらい待って完成だ。餅は腹持ちが良く、非常食に適している。味付けを変えられるのもポイントで、今回は付属のきなこをまぶして食べてみたが、もちもちとして白玉を食べているようだった。
さまざまな非常食を食べてみて、佐藤アナウンサーは「おいしい」と思うものと、好みに合わないものがあったという。
及川さんは「非常食は『買って安心』という人が多いと思うので、まずは食べてみること」と話す。作り方もいろいろあるため、災害時に作り方が自分に合っているかどうか。そして何よりも味が大事だという。「いろんなストレスがかかる状況で、食はとても大切なことになる。ぜひ試してもらいたい」と呼びかける。
災害時は強いストレスがかかったり、疲労がたまりやすくなったりする。「おいしい」と感じることで少しでも心安らぐように過ごすため、味を確かめて「自分に合うもの」を備えよう。