9月23日は「手話言語の国際デー」手話の普及とろうあ者の権利のための記念日だ。聴覚障がいを持つ人は、周囲の変化に気づきにくいため災害に不安を抱えている。手話を学べば防災・減災につなげることができるかもしれない。
<地域から手話を発信>
福島県福島市の「手話サークルやまびこ会」は、耳が聞こえる・聞こえにくい・聞こえない人たちが交流する場所。昭和46年設立のこのサークルは、週に2回手話の学習を行ったりイベントに参加したりしながら、地域から手話を発信している。
<きっかけは人ぞれぞれ>
会員は155人。新規会員数は毎年10人から15人ほどだが、2022年は45人が加入した。手話をテーマにした映画やドラマの影響など、きっかけは人それぞれ。小学2年生の佐藤一椛さんは「耳の聞こえないおじいちゃん、おばあちゃんと一緒にお話ししたかったから」と話し、今では相手の手話を理解出来るようになったという。
<意思表示ができるまで一年>
日常生活の中で、手話での意思表示が出来るようになるまで一年ほどかかるそうだが「伝える気持ち」を強く持てば上達するという。
副会長の山口志保さんは「これからは聞こえる人・聞こえない人関係なく、共に生きる社会になるはず。ここに集まると、楽しい手話が学べる・安心する場に、そういうサークルをこれからも作っていきたい」と話す。
<聴覚障がい者の日常>
福島県二本松市の安齋久人さんと美和子さん夫妻は耳が聞こえない。耳が聞こえる長女のひかりちゃんと長男の颯人くんと4人で暮らしている。
自宅に入り目に入ってきたのは、吹き抜けによって見渡しが良い室内。安齋さんは「何か起きたときに、ドアがあったり仕切りがあるとわからないので」と説明してくれた。耳が聞こえないと頼りになるのが視覚。安全面だけでなく一階から二階にいる人を呼ぶときに、ライトを点滅させたりしている。
6歳の長女ひかりちゃんは、しっかり手話をマスターしている。どうやって覚えているのか聞くと「お風呂で紙を見て練習したり、あとはママから教えてもらったり」と話してくれた。
<外では不便を感じることも>
家族が協力し、助け合い生活を送る安齋さん家族。しかし家の「外」に出ると不便に思うことが数多くあるという。妻の美和子さんは「電車で次どこの駅なのか、どこを走っているのかっていう情報が、この辺だと電車の中にない」と話す。屋外は「見える」情報は多いが、耳が聞こえない人にとって必要な情報は少なく不便を感じている。
<災害への不安>
そして最近、より不安に感じているのが「災害が起きた時の対応」だという。安齋さんは「ろう者は音が聞こえないから、外の様子がわからない。それで突然家の中から水が入ってきて、パニックになってしまう。そういうのは大変怖い」という。安齋さんは「二本松聴力障がい者会」に所属していて、災害の際はラインで会員と安否確認をしている。そして市に対しては、避難所に手話通訳者を派遣して欲しいと要望を行っている。
<手話が一番安心できる>
耳が聞こえる人たちが出来ることを聞くと、安齋さんは「手話を覚えて頂くのが一番安心できる。手話の本などを見て、情報をいただけると嬉しい」という。普段、障がいを持つ方と触れ合うことは少ないかもしれないが、災害時の避難所などで出会う様々なケースが想定される。障がいを持ち、困っている人がいることを知ること、その人たちのために何か出来ないか考え、実行することが大切になる。